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   許すこと、許さないこと
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無事に裁判も終わり成歩堂の体調も回復した。本来ならば裁判が終了した地点で帰っても良かったものの、ついアイツの体調が回復するまでと長居してしまったのは己の甘さゆえ。

また日本を離れる。そう告げた私を責めることもなく、またすがることもなく優しく笑い、見送りに行くよと言った男は、今この場に居ない。目の前に居るのは捜査の腕を除けば頼りになる無骨な刑事だけだ。出発の時間まで30分ほど。そろそろゲートに向かわなければならないというのに。


勝訴のお祝いだと、皆で面会に行くんだと言っていた。あの男は私が何も知らなかったと思っているのだろうか。

成歩堂が大学生だった頃起きた殺人事件。容疑者は成歩堂。しかし犯人は成歩堂の恋人だった。裁判の記録には辛うじて2人が恋人であったことが書かれていた程度の記述であったが、記録に成歩堂の名を見付けたとき、より知るためにその裁判の担当検事に話を聞いた。目もあてられないほどやに下がった顔で聞くに耐えないのろけた証言をしていったらしい。

まったく恥ずかしい話だ。そんなアホな男と今付き合っているだなんて。そしてアホなのは私も同じだ。彼とあの依頼人を、今でも関係があるのではないかと邪推している。


刑事が腕時計を見て出発を促す。わかっている、だが待ってくれ。どんなにアホな男であっても、見送りにくると言った約束ひとつ守れないいい加減な男であっても、最後に会いたい。それだけで安心して行けるから。それでもこれ以上は時間が許さない。ゆっくりゲートへ向かう。



「御剣!」


バタバタと騒がしい足音と共に聞こえた私の名を呼ぶ声。振り返れば何処から走って来たのか、この寒い中汗だくで息切れしている男。遅くなってごめん。あやめさんに会いに行ってたんだ。あっちでも頑張れよ。たまには連絡寄越せよと息切れしながらも引っ切りなしに喋りかけてくる。見送りにくると約束したときのような、優しい笑顔で。さっきまでのもやもやした気持ちが初めからなかったかのように晴れていく。そんな顔であっけらかんと会いにいってたと白状するだなんて反則だ。


「行ってくる」


何も言わない私に不思議な顔をする成歩堂に一言告げる。それだけでまた嬉しそうな笑顔で喋りだす。それに適当な相槌をしつつもう一人見送りにきてくれた刑事に労いの言葉をかける。そして再びゲートに向かう。



「御剣、またな!」

「あぁ」


ゲートをくぐる時にかけられた言葉に深く相槌を返す。さよならではなく、また。どれだけ長く日本を離れていても必ず帰って来ると約束した。


成歩堂にとってあやめさんや美柳ちなみはすでに過去の人なのだろう。この笑顔が全てを物語っている。それを邪推してしまったのは私の未熟さだ。だからこの先もあやめさんの面会に行くことは許してやろう。しかしそれと見送りに遅れてきたのは別問題だ。だが、

振り返れば何も考えていないような満面の笑みを浮かべる成歩堂。この笑顔で結局私はこの男の全てを許してしまうのだ。ああ、本当にこの男は何もわかっていないのだろうか。これまで何度もこの笑顔に負けて私がお前を許していることに。それほど、私がお前に惚れているということに。




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初ナルミツです*
友の描いたみっちゃんが何とも言えない複雑な表情をしてたのでそこからこんな話が生まれましたよ。
りんさんの中でみっちゃんはこんな感じにぐるぐるナルホドくんの事を考えてる乙女なツンデレです。笑

しかし、今回改行少なめ会話少なめを目標にしたせいか、いつも以上に短いSSに;;



2008.2.19.