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それは、一瞬の出来事だった。

フィールドを駆け抜けるアイシールド21に相手チームのラインバッカーがタックルをし、小さな体がその強い衝撃に数m 後ろへと突き飛ばされた。

その時、だった。

ヘルメットの留め具が外れ・・・、

『ア、アイシールド選手のヘルメットが――――ッ!!』

遠くからアナウンサーの驚いた声が聞こえる。

アイシールド21の正体が今、大勢の観衆の眼前に曝された。


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   still
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「セ・・・、ナ?」

アイシールド21のヘルメットの下から出てきた顔は幼い頃から共に育った幼馴染のセナだった。

冗談でも何でもなかった。
先程、自分の目の前を楕円形のアメフトボールを抱えて驚くようなスピードでフィールドを駆け抜けていた。
ボールはまだ、彼の腕の中。
セナの、腕の中。

「う、そ。セナ・・・セナだったの?」

チームの中で唯一、未だアイシールド21の正体を知らなかったまもりは驚きのあまり手を震わせる。

「どうゆうことなの? セナ・・・!」

まもりはふらつく足でセナに駆け寄った。
セナは試合のせいではないだろう汗をかき俯きながら、先に駆け寄ってきた栗田に手を引いて起こされている。
持っていたボールは栗田に渡し、代わりに緑のアイシールドの付いたヘルメットを受け取っていた。


「まもり、姉ちゃん・・・」

セナはもう少しで泣きそうな眼でまもりを見た。
正体を隠していたことに対する罪悪感と、それが不慮の事故でばれてしまったことに対する強い困惑。
その眼に、まもりはそれ以上セナに近寄ることはできなかった。






「―――糞マネ」


その時まもりの後ろから低く、しかしよく通る声が聞こえた。
見なくても判る。声の主は、ヒル魔だ。
アイシールド21の存在を作り上げ、セナをそれに仕立て上げ、自分に正体を隠し続けるようにした張本人だろう。
言ってやりたい文句は山ほどあるはずなのに、何一つ言葉として出てこない。
ただ、唇が震えた。


「糞マネ、答えろ。 ――――・・・3問目、だ」

彼は静かにまもりに話しかける。
3問目、とは何だろうか。

「これに正解したらテメーの勝ちだ。俺にいじめられねーように、ソレ持って退部なりすりゃーいい」

ソレ、とヒル魔はセナを指差した。




『一つでも間違えたら二度と俺に逆らうな。労働力として従順に働け!』
『えー、いいですよ! そのかわり全問正解したら二度とみんなをいじめないって約束して!』


それはもう半年以上も前の、セナとまもりが正式に入部してすぐの頃に些細な言い争いから始まった勝負だった。
しかし、その賭けに勝てばセナはいじめられることはないと、まもりは真剣だった。
1問目、2問目と正解し、あと1問でまもりの勝ちというところでヒル魔は筋トレをすると立ち去ってしまい、結局3問目は出題されることはなかった。

あの勝負はもう無効だと思っていたのに・・・。


「問3―――」

ごくりとまもりは息を呑んだ。

「・・・アイシールド21の、正体を言え」

それは、今まさに答えが曝されたばかりで。
唇が、震えた。


会場全体に観衆のざわめきが木霊している。
フィールドの中央付近に立っているまもりは、その驚きと困惑を色濃く含んだざわめきに飲み込まれそうだった。
嫌な汗が頬を伝い、手が震えた。足も、震えそうだった。

セナが、じっとこちらを見ていた。

大好きな、私が守るべき、セナ。

この問に答えられれば、アメフトなんて危険すぎるスポーツからセナを救える。
守ってあげられる。


セナが、見ている。
・・・泣きそうな瞳で。

指先が白くなるほど強く、ヘルメットを抱きしめて。



――――続けたいんだ、アメフト部!

初めてまもりの手を離し、本当に楽しそうに嬉しそうにアメフトボールを手に取ったセナ。
ならば主務ならば、と了承した。

しかし、彼はアイシールド21としてフィールドを駆けていた。
強く、迷いなく、あの時手に取ったボールを抱いて。




「どうした、糞マネ。降参か?」

後ろからヒル魔の笑いを含んだ声が聞こえる。
ヒル魔は答えが目の前に居るというのになかなか答えようとしないまもりに笑いを抑えることが出来ないのだろう。
正解すれば、セナをアメフトから引き離すことが出来る。それは、まもりがずっと望んでいたことだった。
答えようとしない。それは、まもり自身がセナにアメフトを続けて欲しいと願っているも同然だった。

ヒル魔は、まもりを試していた。

ぎゅっと、拳を握る。

「・・・・・・いいえ」


――――ごめんね、セナ。
例え貴方を悲しませることになるのだとしても・・・。

「アイシールド21の正体は・・・」

貴方は、

「・・・セナ。小早川、瀬那よ」

私が守る―――。





「・・・正解だ」

チッと小さく舌打ちが聞こえ、吐き捨てるように彼は言った。

「その糞チビを連れて、さっさと消えろ」

ザクザクと芝生を踏む音がして、ヒル魔の気配が去ってゆく。

彼は、自分が答えを言わないことを望んでいたのだろう。
ゆっくりと時間をかけて、セナをアメフトに引き摺り込み、まもり自身もアメフトが好きになるようにした。
言いたくはなかった。でも・・・。
まもりは、セナをほんの少しの危険からも遠ざけ、自分の腕の中に収め守ることを選んだ。





「ッル魔、さ・・・、ねえちゃ・・・ッ」

去って行くヒル魔を見て、そのきっかけを作ってしまったまもりを見て。
セナは、その瞳から大粒の涙を零していた。
震えるほどに強く強く、今までその正体を隠し続けたアイシールド21のヘルメットを抱き締めて。





セナは本当にアメフトが好きだった。大好きだった。
私は、それを知っていた。


それでも、

それでも、私は貴方を守る。




それが、私の役目。




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まだ原作ではやってませんけどね。
「こうなってほしい」妄想劇場ですv(笑)

アイシは引きが凄く上手なので、そんな所が凄く好き*
太陽戦なんて読んでてゾクゾクしたもんですvvv
途中で途切れてしまったヒル魔vsまもりの戦い。
さすがにこれは引きじゃないかなぁ、とか思いつつ。(^^;


で、最後に一つ突っ込ませてくれ。
書いた本人が言うのも何だけどさ、君たち、まだ試合中ですよ・・・?(笑)



2004.12.14.