2style.net
ほんのちょっとした嫉妬から、
ほんの少しだけ貴方を疑ってしまったから…。

馬鹿なことをしているとは解かっているけれど。

------------------------------
   desire −前編−
------------------------------


西岐城にて、幹部の一人が失踪した。
周軍軍師・太公望、その人である。
いかにサボり癖のある道士と言えど、一国の軍師で、しかも国は戦争中だ。
もちろん、そのことで西岐城が慌しくなっている事は言うまでも無かった。


そして、その右腕と称される道士・楊ゼンは、自分の仕事のみならず、その能力ゆえか太公望の仕事までやらねばならない、という最悪の状態に陥っていた。
(あの人を探しに行きたいのに!!)
あの人とは、言うまでも無く太公望のことで、周の軍士だとか封神計画遂行者だとかそんな事は抜きにして、ただ大事な恋人だから心配だった。
どこに行ったかなんてことは見当は付いていた。
ただ、外出許可がおりなかったのだ。
周の宰相・周公旦はそれほど甘くは無かった。
(無事だと良いんだけど…)
楊ゼンの心配は募るばかりである。



   ***


そんなことは予測済みなのか何なのか、その頃太公望は仙人界に来ていた。
崑崙山のはずれにある終南山。
そこの洞府の主・雲中子に用事があったからだ。
「たのもー!」
洞府の前で太公望が叫ぶと、奥からひょこひょこと雲中子が出てきた。
「例のものは出来ておるか?」
「まぁね。丁度出来た所だよ」
太公望が前置きも無く問うと、雲中子はにやぁと笑いつつ懐からビー玉程度の大きさの丸い物を取り出した。
「これだろう?」
「うむ。かたじけない」
太公望はその玉を受け取り懐にしまい、礼を軽く済ませた。

「あ、太公望!」
そのとき、雲中子は不意に何かを思い出した様で、慌てて太公望を引き留めた。
「言い忘れるところだった。それの効果は1日だからね」
人差し指を太公望に突き付けて、雲中子はそう告げた。



さて、ここでいきなりなのだが、『それ』のことを少し明記しておこう。
事の始まりは数日前。太公望が雲中子にある薬を作って欲しいと依頼したことから始まる。

「女になる薬?」
「うむ。いきなりで悪いが作ってはくれぬか?」
太公望はすまなそうに言った。
「良いけど、何に使うんだい?」
もっともな質問である。
変なところで生真面目な太公望が、封神計画の真っ最中に真面目にそんなことを言いに来たのだから。
少々動揺している雲中子に、太公望は「ちょっとな…」と顔に苦笑いを浮かべつつ言い、洞府を出て行った。
しかし、ちょっとな、などと言われてはぐらかされても理由は大体見えてくる。
去っていく太公望の後姿を見送りつつ雲中子は笑みをこぼした。

そして、その『女になる薬』が出来たと聞いて取りに来た、と言うわけである。


「効果が1日か…」
意外にも短い薬の効果期間を聞き、太公望は口元を手で覆い、むーっと唸った。
「あんまり長いといろいろ危ないしね」
「危ない?」
雲中子の言葉に何か引っかかる物を感じ、太公望は疑問を口にした。
今の状況を考えると、敵が来る心配は無い。
ならば何が危険だというのか。
「それ飲むと女にはなるんだけど、ナニすると戻れなくなるから」
雲中子は、にこーと笑いながら告げた。
「せ、せぬわ! 何も!!」
顔を真っ赤にして、太公望は怒鳴りつけた。
そして、くるっと後ろを向くと、そのまま早足で洞府を出ていった。



   ***


仙人界から人間界に帰る途中、四不象の背の上で太公望は薬を飲んだ。
『ナニすると戻れなくなるから』
雲中子の言葉が脳裏をよぎる。
(あそこでは咄嗟に否定したが…)
余り自信が無い。
それが本音だったりもする。
ため息を、ひとつ。


「ご主人! 西岐城が見えてきたっスよ!」
不意に四不象が太公望に言った。
もう躰が変化してきている太公望にとっては、戦いの場である。
後悔はしてないが、ため息をもうひとつ…。






next

----------------------------------------------------------

結構古いです。 と、言うか、私が書いた楊太小説第2作目…?
第1作目はとてもじゃないくらい恥なブツなので、ここには載せる気はありませんが。。。

さて、話についての解説でも…。
と言っても何を書けば良いのやら;
取り敢えずながらこの駄作、前中後編に分かれてたりします。
続きは近い内にさくさくアップする予定です。<文は出来てるんで。

この話は、真夏の猛暑の中、頭の中を沸騰させながら書いた話なんで文の形態まで違ってて無性に笑いを誘われます。(笑)
次からは(特に後編)は、乙女の上を行く女の子望なので、苦手な方はご遠慮下さいませ;