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   なんて、ベタな話。
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「楊ゼン!」
4月の暖かい陽の光が降り注ぐ朝、ある家の前で佇んでいた楊ゼンにその家から飛び出てきた少女が声をかけた。
「望、おはよう」
望と呼ばれた少女は手早く扉を施錠すると門を開け楊ゼンの隣に並びにこりと微笑んだ。その姿は真新しいセーラー服で身を包まれている。
「すまぬな待たせて。なかなか着慣れぬから動きづらくて準備に戸惑ったよ」
苦笑しながらちょいとスカートの裾をつまみ楊ゼンに言いつつ、今日から変わった通学路を進む。その後を慣れたようについていきながら、なるほどと楊ゼンは呟いた。
「確かに小学生の頃はいつもズボン穿いてましたもんね」
そういって楊ゼンは改めて望の姿を見た。
深い紺のセーラー服はまだまっさらの新品で余計な皺はひとつも無い。膝丈のブリーツスカートは望が歩くたびにふわりふわりと翻り、胸元には不器用に結ばれたワインカラーのリボン。陽に当たると透けて赤色に見える望の髪とその白い肌に紺の制服は良く似合った。
「望がスカートはいてるの初めて見ましたけど・・・、似合ってますよ。可愛いです」
可愛いといわれたせいかほんのりと赤く耳を染め、望はちらりと楊ゼンを見た。
「お主も、新しいその制服、似合っておるよ」
途切れ途切れになれない褒め言葉を言うとぷいと前を向いて先ほどより幾分早足で望は進んでゆく。そのあとをやはり慣れた足取りで楊ゼンは追った。

二人は小さい頃から近所に住んでいたということでよく遊びいつも一緒にいたいわゆる幼馴染というヤツで、楊ゼンの家から小・中・高へと通う通学路上に望の家があったため毎朝共に登校していた。
今日は望の中学校の入学式だ。そして同時に楊ゼンの高校への入学式でもある。
望は先日まで楊ゼンが来ていたのと同じ紺色のセーラー服をまとい、楊ゼンは緑を貴重とし首元に赤いリボンを結んだブレザーをまとっている。ポニーテールほどではない程好い高さで一つに結ばれた青い髪が歩くたびに揺れた。
楊ゼンは目に新鮮な望のセーラー服姿を見ながらニコニコと笑みを絶やすことなく未だ少し耳の赤い望の後ろを歩いた。
小学校と中学校は近くにあるためほとんど最後まで共に登校できたが高校は中学校とは少し離れたところにあり別れる曲がり角まではもう少しだ。
(ああ、あんまり話できなかったなぁ・・・)
と望が照れることが分かっていつつ可愛いと本音を零したことに楊ゼンは少し後悔した。でも言わずにはいられないほど望のセーラー服姿は可愛らしかった。
「・・・ねぇ、望。折角初めての制服なんですし、一度ターンしてよく見せてくださいよ」
「イヤだ!」
断られるだろうなと思いつつ言ったので、予想通り即答で断られたことに楊ゼンは苦笑した。そしてまた特に喋ることも無く望の後をついていった。

すぐに2人の分かれる角につき「じゃあ、ここで」と楊ゼンは声をかけた。
「うむ」と静かに答え望は中学校へと向かう道に足を向けた。楊ゼンは暫くその後ろ姿を見つめた。
10mほどそのまま歩いていた望だったが、その視線に耐えかねてか突然楊ゼンの方を振り向きその名を呼んだ。
「楊ゼン!」
澄んだ朝の空気にのって望の声が楊ゼンの耳に届く。キラキラとした陽の光に照らされて望の姿はいつもと違って見えた。
そして、くるりとターンをし、それによって広がったスカートを両手で押さえながら望は満面の笑みを浮かべた。
「これで満足であろう!」
そう言って、またくるりとターンをして走って行ってしまう。
楊ゼンはいきなり起きた予想外の出来事に暫く目を見開き、そしてふっと微笑んだ。
「スカートなんだから、あんまりやんちゃしたら駄目ですよ・・・」
小さく呟いて、走って小さくなってゆく望の姿を見つめる。

幼い頃からボーイッシュな服装が好きだった望がスカートなんて女性的なものを着ていたせいか、それとも単純に新鮮なセーラー服姿だったせいか。
いつもより早鐘を打つ心音に心地よさを感じつつ、楊ゼンは高校への道へと足を向けた。








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タイトル以上に言うことなぞ無いですよ・・・。(笑)
楊ゼンはうっかりここで望ちゃんに惚れて、この先れずびあん(望限定)として生きていくのですよ。
溢るるベタさ加減と、ベタと言われるほどの王道さ加減を感じ取って頂けたら幸い*



2006.01.17.