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昔から猫っ毛で・・・
風が吹けば絡まって
木枯らしの強いこの季節
・・・少し気に入っていたこの髪を
我慢しきれず、切ってしまった。



・・・ 藍 風 ・・・




ふわりふわりと髪が風にそよがれる。
幼い頃からショートにしたことがなかった自分には、肩にもつかないこの長さは新鮮だ。
少し、頭がスースーして寒いなぁ・・・とか思わないでもないが、そよ風程度の風で絡まり、その度痛い思いをしていたことを考えれば、そんなことはさほど気にならなかった。

・・・気になるのは、恋人の反応。

さすがにここまでばっさりと切ってしまったのだから気付かないわけはないだろうが、アノ彼のことだ・・・。「似合ってる」だなんて言ってはくれないだろう。
まぁ、彼も男で、自分も男で。
反応が返ってこなかったところで、悲しくて泣いちゃう、なんてことはないのだ。


***


本日の講義は午前に1コマ、午後に2コマ。
1コマ目が始まり閑散としたキャンパス内を沖田は一人のんびりと歩いていた。
24時間前までは腰の辺りまであった髪も、今は肩につくかつかないか。ふわりふわりと髪を躍らせながら彼は第三食堂へと向かっていた。

キャンパス内に3つある食堂の中で一番小さなそこは、他の食堂に比べて混雑しないという理由からか、よく教授たちが利用していた。
沖田の恋人である土方という男は、この大学で教授をしている。見た目の渋さを裏切らず、古文を専攻して教えている彼が、毎週決まってこの時間に第三食堂にいることを沖田は知っていた。

ささやかで、ほんの僅かな、恋人の時間を過ごしに行くのだ。

少しばかり、沖田の足取りは速くなってゆく。


***


予想通り彼はいつもの席でゆったりとコーヒーをすすっていた。目の前に置かれている切り貼りされた紙は講義に使用するプリントを作っているといったところだろう。
沖田は迷うことなく彼の目の前の席に座った。

「おはようございます、土方さん」
「・・・おう」

にぱっと満面の笑みを浮かべて挨拶をする沖田に、土方は顔も上げずに短く返事をする。いつものことなので今更目くじらを立てたりはしないが、今日は昨日とは違う。早く自分の姿を見てほしいと、沖田は土方が熱心に見つめる紙を取り上げた。
彼が、顔を上げる。

「おい、総司。何しやが・・・」

文句を言おうと紡がれた言葉は、残念ながらそれ以上続くことは無かった。

「・・・・・・・・・・その髪、どうした」
「昨日切りましたv」

長い沈黙の後、漸く紡がれた言葉に沖田は先程以上の満面の笑みで即答した。
しかし、対する土方はまるで顔が固まってしまったかのような、所謂しかめっ面であった。

「・・・似合ってないですか?」

あまりに見事なしかめっ面に、さすがの沖田も心配になる。

「別に・・・、似合ってねぇわけじゃないけどな・・・」

歯切れの悪い返答をしつつ、未だ沖田が奪ったままだったプリント予定の紙を奪い返し、鞄に仕舞いながら席を立つ。それに倣い沖田も席を立った。
土方はゆっくりと外へと続く出入り口へと向かった。
外に出た瞬間、沖田の髪を風がすくう。
寒さに首を縮ませる沖田に、土方は呟くように言った。

「おめぇの髪、気に入ってた・・・」

強い風に、ざぁ・・・と周囲の木々が鳴らされる。その音にかき消されそうなそれであったが、沖田は聞き逃さなかった。

「土・・・方さ、ん・・・」

耳を疑った。
まさか彼がそんなことを言うとは思わなかったから。
頬に血が上ってゆく。

「・・・もう俺に無断で切んじゃねぇぞ」

土方は沖田の方を振り返らない。
まっすぐ目の前を見つめながら言う。

彼の頬も熱くなっているのだろうか・・・?

土方の数歩後ろを歩いていた沖田は、ふと頭をよぎった疑問に首をかしげ、じっとその後ろ姿を見つめ、強く一歩を踏み出した。

「土方さんっ」

何も気付いてないような笑顔で土方の顔を覗き込む。彼は不意を突かれたらしく、慌てた様子で口元を手で覆った。
頬はかすかに朱で染まっていた。
その表情に一瞬驚き目を見開いて、ふわりと笑う。

「ありがとう、ございます・・・」

その笑みに土方はますます頬を朱に染め、
明後日の方向を向いてしまった。


***



貴方が、この髪を気に入ってくれていただなんて、知らなかったんです。
口数の少ない貴方は何も言ってくれなかったから。

風が吹くたび絡まる髪に嫌気がさして、
なびく髪を目で追ってくれていたことに気付かなかった。

貴方が、
この髪を気に入ってるといってくれるのなら、
もう切るな、と言ってくれるのなら、

長い髪も悪くないな、と思い、

現金な自分に、苦笑した。





END



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愛する葵ちゃんに捧げます、初・土沖ー。
沖田さんの髪はわしもとても気に入ってるので、一度は髪ネタ書いておかないとって思いまして。必死になって書かせて頂きました*
一人称とか、、、間違えてるかもしれないけど、コミックス見返す気力が無かったよ;

そしてそして、「描いてv」と冗談半分でお願いしたらば本当に素敵なイメージ画像を描いてくれた炬ちゃん。本当に本当にありがとう*

土沖、書いてて結構楽しかったのでまた書くやも・・・。
そしたら葵ちゃん、また貰ってやって下さいませv(笑)

ではでは、こんな感じにて。
喜んでいただけたら幸いです*


04.10.26. 文愉凜