Birthday
 私の誕生日は、いつもいつも虚しいだけだった。

 豪華な料理、生バンドの演奏、たくさんのプレゼント、祝福してくれるたくさんのお偉い客人たち…。
 普通の人から見ると、これ以上無いくらいの誕生日パーティかも知れない。
 だけど、私から見たら唯の虚飾に飾られた物にしか見えなかった。
 表面上に見るとみんな私の誕生日を祝ってくれているように見えるが、実際にはそうではない。
 唯の社交辞令だとか、媚を売るためだけにとか、自分の権力の見せつけだとか…。
 彼等のほとんどはそうとしか私の誕生日を見ていないのだ。

 そして、私の両親も自己満足のためだけに私とそのパーティをキンキラキンに飾り立てる。
 自分の権力と財力をアピールするために、私の誕生日を利用しているのだ。
 結局は『瞳子のための誕生日パーティ』ではなく『自分のための瞳子の誕生日パーティー』としか考えていない…。
 後に残るのは形だけの心のこもっていないプレゼントと虚しい疲労感。
 毎年毎年こんな下らないパーティが行われると思うと、心底ウンザリする。

 でも、今年は違う。
 今年は、たくさんの友人と、大切な人が私のためだけにパーティを開いてくれる。
 この事は乃梨子さんから昨日の放課後に言われたのである。
 一瞬は親のパーティの事があるので断ろうと思った。
 しかし、考えてみたら虚飾に飾られたパーティと友人達の開いてくれるパーティ…当然後者を選ぶに決まっている。
 そう思って私は乃梨子さんからのパーティを受け入れたのだ。
 そしてそれと同時に、今まで下らないと思えてきた自分の誕生日が急速に鮮やかに彩られた気分がした。


 そして今日、私は今親が開いてくれるパーティーを蹴っ飛ばして可南子さんと一緒に道を歩いている。
 パーティ会場は可南子さんの家。
 きっと私と可南子さんの関係のことを考えて選んでくれたのだろう。
 いや、もしかしたら可南子さんから進んで、とも…。
 どっちにせよ、好きな人の家でパーティを開いてもらえる…それだけでも嬉しい。
 優お兄さまには、今日の事を言ってあるけど親たちには何も知らせていない。
 きっと今頃、主役のいないパーティに慌てふためいているだろう。
 それを想像すると申し訳ないという気分よりも、ちょっと言葉は悪いけど『いい気味』という気分のが強くなる。
 思わず少しクスクスと笑みを零してしまった。
「どうしたんですか?」
 その笑みを見られてしまい、可南子さんが声を掛けてきた。
 普段なら少し恥ずかしくてあまり素直になれないけど、今は何だかそういう感情を隠すのが勿体無い気がした。
 そう思って、私は可南子さんの腕にギュッと抱きついた。
「…なんでもありませんわ。」
「…そう。」
 笑顔でそう返してくれて可南子さんからも寄り添ってきて二人の密着度がさらに上がった。
 こうしているだけでも幸せだ。
「そろそろ急ぎましょうか。皆が瞳子さんを待ってますよ。」
「そうですね。」
 そして、可南子さんが私の手を引いて小走りになった。
 その手をしっかりと握り返して離されないように同じペースで走る。
 腕時計を見ると既に六時を回っていた。予定の時刻まであと少し。
 このペースなら時間には大丈夫だろう。
 皆が待ってる、そう思うと自然とペースが上がっていった。

「さあ、主役の登場ですよ。」
 あれから程無くして可南子さんの家に着き、今は会場である可南子さんの部屋の前。
 しかし、いざこうやって入るとなると少し照れくさい。
「ちょっと恥ずかしいものですね…。」
「大丈夫ですよ。皆待ちわびてますから、さあ。」
 きっとこの先にはみんなが待っている…今までに無い、素敵な誕生パーティになるだろう。
 私は少し息をつき、緊張をほぐしてドアノブに手を掛けた。

 パン、パパン!

 私がドアを開けた瞬間、耳をつく炸裂音と共に顔に何かが飛んできた。
 一瞬驚いたがそれをよく見ると、それは紙テープだった。
 紙テープを取り除いて前を見ると、乃梨子さんと敦子さん、それに美幸さんがテーブルを囲んで座っていた。
 そのテーブルの上にはよく市販されているのと同じようなケーキが一つ。
 部屋の中には七夕飾りなどが飾ってあっていつもよりちょっとカラフルだ。
 私がその部屋を見回していたら乃梨子さん達、そして可南子さんが笑顔になって口を開いた。
『ハッピーバースデイ、瞳子!!』
 その毎年上辺だけの言葉とは違う偽りの無い言葉が心に染みた。
 嬉しい、凄く嬉しい。こんなに私の誕生日を祝福してくれる人がいてくれたなんて。
 そんなことを考えて立っていたら乃梨子さんに座らされてから私の頭に何かを被せられた。
 触ってみると、厚紙で出来た三角形の帽子のようだ。
 そうしてるうちに可南子さんも私の隣に座った。
「えー、主役が来たところで今から、瞳子と可南子のウェディングパーティーを…」
「なっ!? ちょっと乃梨子さん!?」
「違うでしょう!!」
 突然の言葉に真っ赤になって私と可南子さんが抗議すると、乃梨子さんが悪戯っぽく笑った。
 そして美幸さんと敦子さんは大笑いしている…主役で遊ばないでください…。
「あー、ゴメンゴメン間違えた。それはまだ先の話か。」
「もう…。」
「アドリブでいい加減なことしないでくださいよ…。」
 相変わらず悪戯っぽい笑顔だが、狼狽しつつも思わずこっちも少し笑ってしまった。
「さて、冗談はさておき。今から瞳子の誕生日パーティーを開催します! では、グラスを持ってください!」
 いつの間にか司会進行役になっている乃梨子さんに言われてジュースが注がれたグラスをみんなが持った。
 それを確認すると、乃梨子さんが口を開いた。
「では、乾杯!」
『乾杯!』
 チン、とお互いのグラスが何回も触れて音が部屋に鳴り響いた。


 こんなに暖かい誕生日なんて、生まれて初めてだった。
 みんなの笑顔と、楽しいゲーム…これ以上無い誕生日プレゼントだ。
 こんなに皆が祝ってくれる自分を、とても愛しく感じられる…。
 そう、思わずにはいられなかった。


あと書き

超突発的に浮かんだショートSSです。まあ有りがちな内容のSSですけど…。
たまにはこういうほのぼのもいいんじゃないですか?
別に可X瞳にしなくても良かった気はしますが、自分の中ではこれがデフォですので(痛)

SSモデル曲:Birthday(フジファブリック)
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